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自分が思う自分と他人が思う自分、本当の自分。その不一致を意識しだしたのは、いつ頃だろう、ある時までは、そんなことさえ気にしてもいなかった、
入れ物
目標、目的は、器になって、その中に知識を詰め込むことができる。器がなければ、すべて零れ落ちて、時間の無駄になるだけだ。何に使うのか、わからないピースを手に入れても使い物にならない、あとになってその用途を発見することはあろうが、そのころには、そのピース自体が使い物にならなくなっている。
里中光男
個人的
心理学は、実践的で、それ故に最大公約数の人間を救おうと考えている。それ故に、問題を一般化して、固定する。意味を固定する。悩みはもう個人的なものではなくなる、普遍性を帯びる。問題の前提条件さえ、一般化される。人間の条件も。
思春期に人間観毛で問題がありましたか?
A、そもそも学校いてなかったんです。
恋愛でひどい振られ方をしたとか?
A、恋愛もあまりしていません、ひとり付き合ったけど、まあ楽しかったです。
大学受験や、就職活動で競争にさらされて、疲れてしまったんではないですか?
A、大学も含めて、受験などしたこともないし、就職活動もしていません。
・・・・・・、幼少期の親子関係、特に母親との関係に問題はありませんでしたか?
A.過干渉であったとは思います、強く怒られることはありました、これは問題ののでしょうか?私の認識では、問題だとは思ってはいません、これが原因なのですか?原因だと思えば、楽になれるのでしょうか?だとすれば、それはなんでもいいのですか?何かのせいにすることを助けてくれるのが、あなたの仕事ですか?すいません、だいぶ意地悪な人間になってしまっています、かなりこじらせてしまっているようです。自分の悩みを一般化されるのが、いやなのです、個人的に悩んでるんです、仮も同じものについて悩んでいたとしても、その苦しみは別のものでしょう?同じとも、違うとも証明はできないけど、それなら自分で選んでもいいのでしょう?どんなに些細なことでも、陳腐で幼稚なことでも、悩んでいいのでしょう?そうです、私は治りたいと思っているわけではないんです、拗らせすぎて、この苦しみそのものが生きがいになってしまっているんです。悩みを悩みのままにしておきたいのです、治そうとすることは、悩んでいるということが異常であるということを暗に認めていることになるでしょう?私は異常ですか?その根拠には、どんな種類のものがありますか?そもそも私は、人間の条件をみたしているのですか?恋愛も、学校も、仕事も、経験値が少ないです、原因がない苦しみに対する処方箋はどんなものですか?原因がないことが原因の苦しみは、いったい何なのでしょうか?
自縄自縛
自分から進んで牢屋にはいって、カギ閉めて、出してくれーって泣き叫んで、鍵開け手、外に出て、自由最高なんて思って、また牢屋戻って泣き叫んでる。なにが効させているかいまいちよくわかっていないが。見せかけの距離を設定して、和解に持ち込む物語、一人で宗教やってるみたいだ。
意味
意味を付与すること、ほとんど反射的だ。
一見無秩序でも、何かしら法則があるように見える、それが本質的にも、無秩序でも何かしら見出す、法則を、意味を。
意味ビジネス、付加価値をつけて、売り出す、無意味さえも、意味になる、すべて意味、意味の牢獄、牢屋、抜けたいけど、抜けることにも意味があるから、やはり意味はある、意味意味意味。意味地獄。自分の意図していない意味を付与されることもある、いい方向に進めばいいけどね。ネガティブなのはいやだ。
移動
移動が好きだ。
移動するもの、移動させることが好きなのではない、それもいいけど。
移動している状態にいることが好きなのだ。
変化の最中にいること、その変化によって、これから何か新しいことが始まるかもしれないという期待感、ぼーっとしていることさえ、移動しているということが免罪符になり、許されそうな雰囲気、なにかすればそれはそれで時間を有効活用していて、得をしている気分になれる。目的なんて、空っぽでいい、移動を必要としてさえくれれば。
模写
確かにいまの時代の方が、普通なのかもしれない。高度成長、巨大な需要、バブルが異常だったのだろう。では、今の時代をどう生きるかは若者だけの課題なのか?
天井の電球を、反射している白くて丸いテーブルに、ガラス製の灰皿がある。フィルターに口紅のついた、細長いたばこがその中で燃えている。洋ナシに似た形をしたワインの瓶がテーブルの端にあり、そのラベルにはブドウを口に頬張り房を手に持った金髪の女の絵が描かれてある。グラスに注がれたワインの表面にも天井の赤い灯りが揺れて移っている。テーブルの足先は毛足の長いじゅうたんにのめり込んで見えない。正面に大きな鏡台がある。その前に座っている女の背中が汗でぬれている。女は足を延ばし黒のストッキングをくるくるとまとめて抜きとった。
左横にある箪笥の上には、多くの本が無造作に積まれている。本が置かれていないスペースには、飲みかけの缶、灰皿代わりにしている吸い殻が詰まった貯金箱、クーラーのリモコン、財布、買ったまま放置されているのど飴、片側のレンズが外れた眼鏡、スーツ屋の会員カードが、何の法則もなく散らかっている。隣の机には新しいコンピュータが置いてあり、その前男が座っている。男はニット帽をかぶりディスプレイを覗き込みながら、キーボードをたたいている。ディスプレイの横には、化学や特許と書かれたファイルがいくつか立てかけてある。